<板橋区成増>内科・糖尿病・甲状腺TEL.03-3977-8222
頚部の触診および甲状腺エコー検査にて甲状腺を検索します。さらに採血によって甲状腺ホルモンやバセドウ病の抗体などを検査します。
リンパ節で作られるバセドウ病の抗体、TSHレセプター抗体(TRAb)や甲状腺刺激抗体(TSAb)が甲状腺に働いて、甲状腺ホルモンを多く作らせるのが原因です。抗体ができる要因は、遺伝性が80%ですが、残り20%は喫煙、妊娠、ヨードなど様々なものも関わっています。
遺伝性がある場合には若年発症が多く、10代で発症することもあります。20歳以下で発症する場合を小児バセドウ病と言いますが、医療助成制度があり経済負担が軽くなります。
一般的には30-50代の女性に多いのですが、高齢者でも発症することがあり、慎重に検査を行う必要があります。
体重が減り始めたり動悸が出現したころに発症したと推測されます。採血によりALP(骨の値)が高ければ数か月以上前からの発症が疑われます。
抗甲状腺薬による内服薬治療が通常行われますが、放射線を用いたアイソトープ治療も可能です。まれですが手術を行う方法もあります。
内服薬治療ですとバセドウ病の抗体がなくなるのに約2年間、内服薬中止後2年間の経過観察が必要ですので、計4年間程度はかかります。但しバセドウ病の抗体が高いままですと内服薬を継続する必要があり、治療期間はさらに伸びることになります。
アイソトープ治療は施行後約3カ月で甲状腺ホルモンは低下します。その後甲状腺ホルモン製剤の内服を開始して、施行後約1年で安定します。
手術の場合は術直後に甲状腺ホルモンは低下することになります。
抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)にはアレルギーや肝機能障害などのほか、無顆粒球症という重篤な副作用がありえます。確率は500~600人に1人ですが、決して少なくないと考えます。そのため内服開始2か月間は2週間毎に採血を行う必要がありますし、その後も定期的な検査を行って副作用を見逃さないことが大切になります。
またヨウ化カリウム丸を内服する際にはヨードアレルギーの可能性を考慮する必要があります。
もし副作用で内服薬治療ができない場合にはアイソトープ治療を検討します。
バセドウ病を放置すると脈拍数が速くなり心不全となります。甲状腺ホルモンが突然高値になると甲状腺クリーゼという病態となり救命が困難になります。毎年200人前後の方がバセドウ病で死亡されます。但ししっかりと治療されて甲状腺ホルモンが安定していれば死に至ることはありません。
甲状腺ホルモンが高い間は激しい運動や脱水を伴う環境、危険な勤務や高所での作業は避ける必要があります。しかし治療により甲状腺ホルモン値が正常となれば通常の勤務は可能となります。
バセドウ病の原因の内、環境要因として喫煙があるので禁煙が必要です。特に遺伝性がある場合には体調の変化に気を付けて、検査を受けることをお勧めします。
また抗甲状腺薬を内服中の場合にはヨード制限を行うことで、治療薬の効果を高めることが大切です。但しヨウ化カリウム丸を内服する場合にはヨード制限は不要となります。
頚部の触診を行い、甲状腺腫が著明な場合には甲状腺エコーも行います。さらに採血によって、甲状腺ホルモンや自己抗体などを採血します。
リンパ節で作られる橋本病の抗体、抗サイログロブリン抗体や抗TPO抗体が甲状腺に働いて、甲状腺ホルモンを作らせないようにするのが原因です。抗体ができる原因は遺伝性の場合もありますが、日本人の20人に1人ぐらいに抗体があり、特に40代女性では10人に1人程度抗体を持っていると言われています。日本人にとても多いのです。
日本で生まれた赤ちゃんは必ず甲状腺ホルモンを調べられます。異常があればすぐに治療が開始されます。しかし子供は甲状腺ホルモン分泌が不安定なため定期的な内服薬治療を開始するのは成長の様子を見てからになります。
一般的には女性に多く、妊娠時の検査で発見されることがあります。特に東京都では妊婦全員の甲状腺ホルモンおよび抗体を検査しており、安全な妊娠維持のため甲状腺機能低下症に対して内服薬治療を行うことがあります。
また更年期症候群の症状が甲状腺機能低下症の症状と似ているため、40-50代の女性が検査で指摘される場合も多くあります。
倦怠感が出現し始めたころから発症したと推測されます。甲状腺機能低下症の初期段階では症状が軽いため、病気であると気付くのに時間がかかることが多く、病状が進行してから受診される方も多くいます。
甲状腺機能低下症となればチラーヂンSという甲状腺ホルモン製剤を内服します。足りない分を補うだけですので、治療と言うより補充と言った方が正確だと思います。
但し、橋本病の抗体を持っていても甲状腺機能低下症となる確率は3%程度です。逆に97%の人は甲状腺機能は保たれるため、治療は必要ありません。誤解の多い点ですが、無用に心配する必要はありません。しかしいつ3%に入って甲状腺ホルモンが低下するかは予想できませんので、症状がなくても1年に一度程度の採血検査をお勧めします。
原則として内服は一生継続することになります。内服薬の半減期(効果が半分になるまでの期間)は1週間ですので、それ以上内服を中止すると体の甲状腺ホルモンが足りなくなってしまいます。また年齢と共に甲状腺ホルモンの分泌量は少なくなるため、必要に応じて内服薬を増量していくことが多く、定期的な検査で経過観察を行うことが大切です。
チラーヂンSは化学的に作られた甲状腺ホルモンであり、必要量を内服していれば副作用はほとんどありえません。ただし必要以上に多く内服すると甲状腺機能亢進症の症状を伴うことになります。
長年にわたり甲状腺機能低下症が持続すると心拍数が遅くなるため心不全となり、全身に浮腫みがでます。これは粘液水腫と言われ、意識障害を伴い死亡原因にもなります。しかし、甲状腺ホルモン製剤の補充を行えば改善が見込まれます。
甲状腺ホルモン値が基準値であれば医学的には問題はありませんので、橋本病であっても通常勤務が可能です。
食事で摂ったヨードの95%は甲状腺に集まるので、ヨードの過剰摂取により甲状腺機能低下となります。そのためヨードはできるだけ食べないようにすることが大切です。しかし和食はヨードを多く含んでいるためヨード禁止は困難です。そのため他の人よりも少なく食べるようにヨード制限をしてもらいます。
また妊娠中、胎児は母体から甲状腺ホルモンをもらうことで発育します。そのため妊娠中は通常の甲状腺ホルモンの約1.4倍多く必要になります。妊娠を予定される場合はあらかじめ甲状腺ホルモンの補充を行い、安定した妊娠維持を目標とすることをお勧めします。
頚部の触診および甲状腺エコー検査にて甲状腺を検索します。さらに採血によって甲状腺ホルモンや腫瘍マーカーとしてサイログロブリンなどを検査します。
甲状腺エコーの所見で、腫瘍の大きさ、内部血流の増加程度、腫瘍の辺縁が明瞭か、甲状腺外に浸潤していないか、内部エコーが均一か、石灰化がないか、頚部リンパ節への転移がないかなどを見て判断します。
また腫瘍マーカーのサイログロブリンも参考になります。
以上の所見から甲状腺癌が疑われる場合には穿刺細胞診を行い、良性悪性の鑑別を行うことになります。
エコーで見ながら、採血時と同じ細い針を腫瘍に刺して注射器で細胞を吸引します。甲状腺の中には神経がないため、刺した後は痛みを感じません。1回の穿刺は10秒程度です。細胞の数が少ないと診断困難となるため、通常2,3回穿刺を行います。圧迫止血にて終了となりますが、翌朝までは再出血を避けるため安静にしてもらいます。
細胞診の結果classⅠとⅡは良性、ⅣとⅤは悪性です。Ⅲは経過観察となります。
原則として手術を行います。全身麻酔による手術となりますので、甲状腺専門の外科手術が必要です。当院は多くの病院と連携しておりますので、紹介先の病院は相談に応じて決めております。