院長からの処方箋Letter

新型コロナウイルスについて-3-

2020.04.28

マスコミにて毎日報道されているコロナウイルスですが、ようやく新たな感染者数が減少傾向にあるようです。

しかし、介護施設や病院などにて高齢者が犠牲になっており、まだまだ油断はできないと思います。

今回で3回目の報告になりますが、予防はかなり広まっているので、今後は高齢者を守ることが課題になると考えます。

 

【1】発病しない若年者と命を落とす高齢者

クラスター対策が今までの主流であったことは報道されている通りです。

しかし現在新たな感染者の70~80%は感染ルートが特定できない状態です。

このままクラスターのみを追いかけても感染は止まりません。

特に若年者は感染しても症状がなく、自覚しないまま他者へ感染を広めることが指摘されています。

現在学校を休校してstay homeと呼び掛けているのもこのためです。

ただしこれだけでは高齢者を守ることはできません。

これからの課題はいかに高齢者への感染を防止するかなのです。

介護施設や高齢の入院患者が多い病院、免疫抑制の治療を行う病院などへの感染予防が十分ではありません。

特に外来と病棟を同じ医師が行う日本の医療現場において、院内感染は避けられません。

コロナ感染が疑われる患者の外来は別の施設を設けて、入院患者へのルートを遮断すべきです。

できるなら外来担当と入院担当の医療従事者も分けることが望ましいです。

そしてお見舞いなどもできるだけ控え、不可欠な面談も感染予防ができる面談室を用意すべきです。

理想を言えばキリがありませんが、コロナで死亡された方のほとんどが入院中の高齢者であることは事実です。

できる限りの対応をすべきだと考えます。

 

【2】コロナのPCR検査について

海外ではPCR検査を簡便化して多くの方が検査を受けて自宅待機で感染拡大が予防できています。

一方日本では希望してもPCR検査が受けられない実情があります。

最も大きな理由は検査技師不足です。

いくら検査キットが多くてもPCRを信頼できるレベルで行える人が少ないのが事実です。

大学で研究している院生などPCRが確実に行える人に臨時検査をお願いするなど方法はあったはずでしょう。

人間の専門的な技術に対する評価が日本ではとても低いのが原因だと感じます。

遅くはなりましたが、今後いろんな方法でPCR検査数を増やす方向で検討されていくと思われます。

そこで問題なのはPCR検査結果の評価になります。

実はPCR検査は熟練した技師が行っても正確な結果を出すのがとても難しいのです。

そのため一度陰性であった人が再度陽性になった場合に検査手法に疑問が残ります。

現在2回連続で陰性であることが退院の目安とされていますが、それで十分かどうかの根拠はありません。

 

【3】コロナの抗体について

前回コロナに対する抗体の話を書きましたが、ようやくアメリカで抗体検査が実施されました。

実はすでにコロナの抗体を持っている人が16%程度いたとの報告でした。

日本においてはもっと多くの人が抗体を持っていると推測されます。

ただし、抗体があることと感染しないことは一緒ではありません。

例えば水痘(水ぼうそう)にかかった人は水痘抗体ができますが、ウイルスは生き残って将来帯状疱疹をおこします。

ですので、コロナの抗体を検査する際にはできる限りPCR検査を同時に受けて、抗体がウイルスを駆逐したことを証明する必要があります。

新しいウイルスの特徴を捉えるためにも抗体とPCRの同時検査により確実に「治った」との確認が望ましいと考えます。

 

以上、私見を述べましたが、現実的には人材の問題が大きく、理想的な対応は困難であることは承知しております。

しかし、感染症との戦いは永遠に続くものですので、今回のコロナをきっかけに将来に向けての対策を講じる議論を止めないことが大切だと思います。

最後に、命を落とされた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、高齢者への感染防止対策が早急に講じられることを切に願います。