院長からの処方箋Letter

新型コロナウイルスについて-4-

2020.05.27

新型コロナウイルスの新たな感染者数が少なくなり、東京でも緊急事態宣言が解除されました。
しかし感染者数がゼロになったわけではありませんので、今後も引き続き注意深く事態を観察していく必要があると思います。

 

【1】第2波とは
一旦感染が落ち着いた後に再度感染がぶり返す第2波が来ることが予想されています。
いくつかの原因が考えられますが、以下の3つに分けられると思います。
まず一つ目は緊急事態宣言が解除されることで、人々の交流接触の機会が増えることです。
感染者は潜在的に存在しますので、予防を怠れば再び感染が広まることが予想されます。
しかし、これは今まで通り予防を行うことで防ぐことのできる第2波ですので、心掛け次第と言えます。
2つ目に考えられるのが海外から再度ウイルスが入ってくる可能性です。
今後入国規制が緩和されることでヨーロッパやアメリカ、アジアなどから日本に多く人が入ってきます。
ウイルスの遺伝子は日々変化しており、他国で変異したコロナウイルスが日本に来れば新たな猛威となりえます。
いわば新々型コロナウイルスともいえるものを想定しておく必要があると思われます。
これに対しては現状の医療体制では対応しきれない可能性があり、迅速に医療の改革を行う必要が出てきます。
最後3つ目に確実に来る第2波は季節によるものです。
現在気温や湿度の上昇によりウイルスの勢いが収まっています。
しかし、秋から冬にかけて気温と湿度が下がると再びウイルスの勢いが盛んになると予想されています。
実際に過去にもスペイン風邪が2年目と3年目にも冬に流行した事実があります。
そのため、今年は秋口から十分な予防を行う必要があります。

 

【2】治療薬について
現在何種類かの治療薬が試されましたが、残念ながら効果が確認されたものはありませんでした。
実際に使われているのは、インフルエンザやB型肝炎ウイルスなど他のウイルス感染症に対して作られた薬です。
一般的にウイルスの増殖を抑制する目的の薬であり、新型コロナウイルスにも効果があると期待されて試されました。
しかし臨床的な統計を取ってみると新型コロナウイルスに対しての効果は認められませんでした。
他の方法としては、新型コロナウイルスに感染した後回復された患者さんの抗体を用いる方法があります。
その抗体は患者さんの血清にあるので、それを精製して薬とする血清療法です。
例えば毒蛇に噛まれたときには抗毒血清を用いて治療を行います。
しかし現段階では血清の精製も困難なようであり、有効であったとの症例報告はありません。
現在のところ感染者自身が新型コロナウイルスに対して抗体を作る、自分の免疫力で回復するしかない状況です。

 

【3】ワクチンについて
現在世界中で新型コロナワクチンの作成が試みられています。
しかし現時点ではまだ有効なものはできていません。
今後ワクチンが完成したとしても、そこから増産して希望者全員に接種可能になるまでには少なくとも半年以上はかかります。
そしてもしワクチン接種を行ったとしても効果は4カ月程度と考えられるので、一時的な予防効果と考えられます。
ワクチンは大流行を抑制する手段ではありますが、新型コロナウイルスを駆逐するものではないのです。

 

以上、今回で4回目になりましたが、今後は新型コロナウイルスが慢性的に存在することが予想されます。
特に免疫力の低下した高齢者や若い人でも生活習慣病などの基礎疾患のある方は治りにくいことが分かっています。
感染しないことが最も大切なのですが、次にできることは生活習慣病を良好にコントロールして免疫力を高めることです。
外出自粛で糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病が増悪している方がとても多くなっております。
これからは運動療法をしっかりと行い、病態を良くすることで感染しても重症化しない体力を作ることが大切なのです。
基礎疾患を良くすることも感染対策の重要なポイントであることをもう一度確認していただきたいと思います。